太陽の竜と闇の青年

[壱]



結局あれからルウを追うことは出来なかった。


代わりに牙城のお説教と信濃との散歩があった。


「壱!何考えてんの!?壱はルウちゃんが大切じゃないの!?ルウちゃんよりもそっちの女を取るっていうの!?」


珍しく俺に本気で怒ってきた牙城に呆気にとられながらも俺は何も答えなかった。


「僕は絶対に嫌だから。あの女が壱に嫁ぐなんて有り得ないから。もしそうなったときは僕は壱に王位なんて渡さない。僕が王になってこの国を変える。そしたら信濃だって壱から離れていくよ。どうせあの女は地位と金と顔目当てで壱に近づいてるんだからさ」


牙城はいつも信濃のことを悪く言う。


二人が天敵だっていうのは知っていた。


俺はどうしても信濃を嫌うことができない。


「第一、信濃よりもルウちゃんのほうが何千倍と性格もいいんだよ!壱を暗闇から助けたのは信濃じゃない!ルウちゃんじゃないか!壱だってルウちゃんの錘をのけてあげたくないの!?ルウちゃんは壱の錘をのけてくれただろ!?今度は壱がその恩返しをする番じゃないの!?」


何も答えない俺に牙城はため息をついた。


「壱。変わったね。昨日の一瞬でさ。久しぶりに信濃と会ったから変わっちゃったの?シェイさんと会っていた時はふつうだったのに。今の壱おかしいよ。僕、壱は兄として尊敬できる人だと思ってたけど、今の壱を尊敬することはできない。もう勝手にしなよ。僕は知らないから。ルウちゃんが知らない男と結婚してしまっても。壱が後から信濃の本性を知って後悔してもね」


そう言い放つと、牙城は部屋から出ていった。


無意識に手が唇へと動いていた。


ルウとは違う、別の女とキスしてしまった。


もしそのことがルウに知られてしまったら……。


それが恐ろしかった。


ルウが俺から離れていく。


ルウとは一生会えなくなってしまうかもしれない。


そんなの嫌だ。


俺が立ち上がり、部屋から出ようとした瞬間、障子が勝手に開かれ、信濃とぶつかりそうになった。


「……何、か用か?」


俺が少し驚いて信濃に訪ねると、信濃が頬を少し赤らめて言った。


「散歩に行きませんか?」


ふと廊下に目をやると、こちらを牙城が鋭い目で睨んでいた。


あの目も俺は知らなかった。