太陽の竜と闇の青年

「……リドゥー」


「何?」


「本当のこと言って」


「言うよ」


「壱は信濃さんと……キスしたの?」


リドゥーが息を吸い込んだ。


「その答えは俺が言っても俺は得しない」


「得するから……」


「そ。でも、何の得するの?」


「……」


リドゥーにとって確かに得しない。


私が黙っていると、リドゥーが小さなため息をついて言った。


「俺は得しないことはしたくない」


「……うん」


「例え話でいいから聞いて」


「……うん」


「もしも壱っていう男の人が女人から強引にキスさせられたらルウちゃんはどうする?」


同じ質問だ。


もしもそうだとしたらどうするんだろうか?


壱から離れるんだろうか?


なかなか答えない私にリドゥーはまたまた深いため息をついた。


「質問を変えよう。どうする?じゃなくて、ルウちゃんは好きでいられる?にしよう」


私は少し黙っていたけど、首を横に振った。


「好きではいられない、と思う……」


キュッと水の止まる音がした。


「そ。じゃぁ好きでいられなくなったらルウちゃんは壱って男から少しでも遠くに逃げようとするよね。今回みたいに」


「……うん」


絶対にするだろう。


リドゥーが私の頭に腕がぶつからないようにして腕をあげて手をタオルで拭いた。


「そ。でもどこに逃げるの?」


どこに?


今回はリドゥーのところだった。


次はどこに逃げるんだろうか……。


たぶん、一番に逃げるところは……。


「風国だと思う」


それか、砂国にシルバに相談しに行くだろう。


リドゥーが私を腰に引っ付けたまま歩いた。


私はズルズルと引っ張られるようにしてしがみついていた。


「そ。俺のところに来るっていうのはないの?」


「……ある。今だってリドゥーのところに逃げてきたから……」


誰にも見つからないようにしたいんだったら、きっとリドゥーのところに来るのが一番いいだろう。


リドゥーの元にこれるのは私やフウと同じ異能力者だけだから。


しかもここまで来るにはリドゥーの意志が必要だ。


もしもリドゥーが入れたくないと思った人間はここには入れない。


「そ。なら良かったんだけどね。でも、ルウちゃんは婚約者がいなくなってしまうわけだよ?そうしたらどうするんだい?父上に怒られてまた勝手に決められるのを待つ?」


私は首を横に振った。


「王族と結婚するのは嫌だ。絶対に人の目があるから。怖いし嫌い」