はちみつのいい匂いで目が覚めた。
目は覚めたけど、布団からでることはしなかった。
ただキッチンにたって朝ご飯を作っているリドゥーの後ろ姿を見ていただけだった。
「起きたの?」
リドゥーがこちらを振り向かずに聞いた。
「起きた。でも何か布団からはでたくない」
リドゥーが一癖ある笑い方をする。
「そ。なら出なくてもいいよ。でも、俺の後ろ姿見てるだけじゃつまらないんじゃない?」
私は無言でその後ろ姿を見つめる。
細身の体だけど筋肉はついていて、壱に少し似た背中だった。
すると、ポツリと言葉が漏れた。
「壱、どうしてるかな……」
今までガチャガチャとなっていた食器の音が止んだ。
「気になるの?」
「うーん……。気になるのかな……」
結局、壱は追いかけてこなかった。
いや、追いかけて来たかもしれないけど、リドゥーには導かれなかっただけなのかもしれない。
牙城につけてしまった傷はどうなっているんだろう?
信濃さんは……。
この人のことは今は考えないようにしておこう。
「壱と初めて出会ったのは和国の和菓子屋でだった。私が和菓子屋の和菓子を見てたら、壱が横から「食べたことがないのなら、食べてみればいい。ここの和菓子はほかのところよりも美味い」って言って私に一つ和菓子をくれたの。短髪で少し背が高くて、鋭い目をしていて、見惚れるほど整った顔つきで……。一目惚れだったのかもしれないなぁ……。でも私が一番驚いたのは、壱が話しかけてくれるまでその存在に気づかなかったこと。壱はずっと和菓子屋の中にいたのに、私は和菓子屋に入っても壱の存在に気がつかなかったんだ。暗殺者ってすごいよね。それで、壱と話してみたらあまり喋らなくて、でもしっかり者で、壱はすっごくいい人なんだ。私の悩みだって聞いてくれたし……。私たちが竜の民だっていっても驚かなかった。竜の民だから何だ、そんな感じの目でみられたの。私たちの銀髪をみて驚かなかった人間。私、壱のおかげで助かったこと何百回とある。それに壱はすっごい一途で、守ると決めたものは最後まで守り抜く人なの。私が倒れたときだって何ヶ月も一緒にいた。時間が空けばすぐに私のところに飛んでいった。フウたちがいないときは必ず壱がいてくれた。もしかしたら旅にでて私と一番長くいたのはフウじゃなくて壱なのかもしれない。私、壱以外の王族が私を馬鹿にせずにずっと守ってくれるなんて考えられないの。私にとって壱は特別な存在になっていた」
目は覚めたけど、布団からでることはしなかった。
ただキッチンにたって朝ご飯を作っているリドゥーの後ろ姿を見ていただけだった。
「起きたの?」
リドゥーがこちらを振り向かずに聞いた。
「起きた。でも何か布団からはでたくない」
リドゥーが一癖ある笑い方をする。
「そ。なら出なくてもいいよ。でも、俺の後ろ姿見てるだけじゃつまらないんじゃない?」
私は無言でその後ろ姿を見つめる。
細身の体だけど筋肉はついていて、壱に少し似た背中だった。
すると、ポツリと言葉が漏れた。
「壱、どうしてるかな……」
今までガチャガチャとなっていた食器の音が止んだ。
「気になるの?」
「うーん……。気になるのかな……」
結局、壱は追いかけてこなかった。
いや、追いかけて来たかもしれないけど、リドゥーには導かれなかっただけなのかもしれない。
牙城につけてしまった傷はどうなっているんだろう?
信濃さんは……。
この人のことは今は考えないようにしておこう。
「壱と初めて出会ったのは和国の和菓子屋でだった。私が和菓子屋の和菓子を見てたら、壱が横から「食べたことがないのなら、食べてみればいい。ここの和菓子はほかのところよりも美味い」って言って私に一つ和菓子をくれたの。短髪で少し背が高くて、鋭い目をしていて、見惚れるほど整った顔つきで……。一目惚れだったのかもしれないなぁ……。でも私が一番驚いたのは、壱が話しかけてくれるまでその存在に気づかなかったこと。壱はずっと和菓子屋の中にいたのに、私は和菓子屋に入っても壱の存在に気がつかなかったんだ。暗殺者ってすごいよね。それで、壱と話してみたらあまり喋らなくて、でもしっかり者で、壱はすっごくいい人なんだ。私の悩みだって聞いてくれたし……。私たちが竜の民だっていっても驚かなかった。竜の民だから何だ、そんな感じの目でみられたの。私たちの銀髪をみて驚かなかった人間。私、壱のおかげで助かったこと何百回とある。それに壱はすっごい一途で、守ると決めたものは最後まで守り抜く人なの。私が倒れたときだって何ヶ月も一緒にいた。時間が空けばすぐに私のところに飛んでいった。フウたちがいないときは必ず壱がいてくれた。もしかしたら旅にでて私と一番長くいたのはフウじゃなくて壱なのかもしれない。私、壱以外の王族が私を馬鹿にせずにずっと守ってくれるなんて考えられないの。私にとって壱は特別な存在になっていた」

