太陽の竜と闇の青年

「信濃……」


「あたし、壱が暗殺者だと知ったときは本当に怖かったです。けれど、何日か経った後に、もしかして本当に怖かったのは壱のほうなんじゃないかって思って。それでここを訪ねても壱はいなくて、あたしずっと壱を探していたんです!ようやく見つけたと思ったら、ルウさんと結婚するって……。あたし本当にショックを受けてしまったんです。壱の本当の好きな人はあたしだったんじゃないかって、そう何度も思いました。それに壱があたし以外の女人の人と話すなんて耐えられなかったんです……。壱、あたしは本気であなたを愛しています」


俺はその場に立ち尽くしていた。


信濃の気持ちはよく知っていた。


けれど、改めてこう言われると、どうすることもできなかった。


その時、グイッと引っ張られ、俺の唇に柔らかなものが当たった。


それが何か分かったとき、俺は目を見開き、目を伏せている信濃の顔を凝視した。


数秒後、信濃は俺の唇から柔らかなものをのけると、俺の横を素早く通り抜き、どこかへと走っていった。


俺はその後ろ姿をみることもできず、呆然と立ち尽くしてしまった。


……ルウ以外の女とキスしてしまった。


そのことが頭にのしかかった。


そのとき、後ろでカタッと物音がした。


「ルウ……?」


ハッとして振り返ると細身の男が立っていた。


身長は俺よりかは低いが、高いほうだ。


何よりも目についたのは満月の光で光ってみえる金髪と茶髪の間の髪と金目。
俺でも初めてみた混ざり者だった。


その目は俺をまるで軽蔑するように眇められていた。


「ルウちゃんが殺しかけた男っていうのが気になって来てみたけど……浮気者だったんだ」


俺は男を凝視した。


片手に竪琴を持っていた。


「……リドゥー……」


「あんたに俺の名前を呼んでほしくない。俺の名前を呼んでもいいのはルウちゃんとフウ君だけだ」


鋭い獣の目をしている。


金色がより一層それを強調させていた。


「ルウちゃんは俺のところに逃げてきた。助けを求めていたから俺はルウちゃんを導いた。あんたがいくらルウちゃんを連れ戻そうと走ったって、浮気者のあんたを俺は導かない」


導くとか導かないとか、どういう意味だ?


苛つく心を押さえ込むようにして俺はリドゥーを睨んだ。


「俺はあんたをなんて呼べばいいんだ?」


そう聞くと、リドゥーがクスリと一癖ある微笑みを浮かべた。


「俺、誰にも真の名を教えてないけど、あんたとはいずれルウちゃんとのライバルになりそうだから教えてあげる。俺の真の名は[アナザー]。でも、リドゥーのほうが気に入ってるからそっちのほうが好きだけどね。ちなみに、このリドゥーってルウちゃんがつけてくれたんだよ」


聞いたところ、アナザーはルウが好きということか。