太陽の竜と闇の青年

[壱]


結局、俺は医療室に行った。


牙城が納得いかない顔でついてきたが、肩の傷を縫っていると、我慢するのに必死なのかもう何も言わなかった。


信濃が傷の治療を受けながら、俺を見て俺の頬に白い手を伸ばした。


「壱。どうしたんですか?浮かない顔ですが……」


俺はその白い手に縋るような気持ちだった。


もしルウではなく、信濃と結婚したら……。


ルウよりも疲れないかもしれない。


竜の民だのなんだのって考えなくてもいいかもしれない。


ルウのように心の錘をいちいち取り外さなくてもいいかもしれない。


ルウよりも楽につき合えるのかもしれない。


そう思った。


信濃はルウと出会う前の俺と話せる女人の一人だった。


和国内では美姫と噂されるほどの女で、親も信濃を気に入っていた。


器用で勉強もよくよくできる。


ルウのように剣術や武術などはできないが、弓道や銃などの狙って撃つものは得意だった。


ふと思った。


なぜ俺は信濃ではなく、ルウを選んだのだろうかと。


圧倒的に信濃のほうが一生を終えるのにはやりやすいし、王族としても断然よかった。


だが、俺はルウを選んだ。


それは何故か。


俺は信濃の手から頬を除け、信濃の顔をまじまじとみた。
信濃が照れくさそうに頬を染めている。


何が違う。


何が、違うんだ。


そのとき頭に声が響いた。


「人を想う心さ」


その声は男の声だった。


俺の知っている声ではない。


だけど、どこか聞いたことのあるような声だった。


でも知らない声。


不思議な気持ちになった。


人を想う心……。


俺は信濃に質問をした。