太陽の竜と闇の青年

「……信濃」


俺は信濃をみた。


信濃の長い髪が目につく。


ルウとは違う黒い髪。


俺は反射的に信濃の手首を掴んだ。


信濃が驚いた目でこちらを凝視する。


「どうしたのですか?」


丁寧な言葉遣いで、聞きやすい声は俺も好きだった。


「……ルウを何故撃った?」


信濃が眉をひそめて俺に言った。


「それは壱が殺されそうになっていたからです」


「ルウは俺を殺そうとなんて考えていない」


「でも、事実。ルウはあなたが苦しんでいても手を緩めることはしなかった」


俺は身振り手振りで信濃に言った。


「だが、ルウは泣きそうな顔をしていた」


声が掠れた気がした。


こっちが泣きそうになる。


「あたしにとって大切なのは壱で、ルウさんはどうでもいい存在なのです。例えあなたにとってルウさんが大切でもあたしはあなたの命のほうを優先するのです」


そのとき、信濃を突き飛ばした人がいた。


真っ赤な目が燃えるようにみえた。


「壱。騙されたらダメだよ。コイツはルウちゃんを殺すつもりでいた。壱。そろそろ目を覚ませ。コイツは許嫁だけど、元だ。今の結婚相手はルウちゃんだろ?この前壱言ってたじゃん。ルウちゃんを苦しめるような奴らは俺が殺してやるって。その苦しめてるような奴らの中にコイツはいるんだよ。ルウちゃんがあぁなったのはコイツのせいなんだよ」


牙城の肩から血がでていた。


鋭い牙か爪のようなもので引っかかれたような痕。


ハッとして信濃をみると、信濃の頬にも同じような傷があった。


肌が白いため、その赤が余計目立つ。


「信濃。その傷……」


信濃は目を伏せて言った。


「はい。ルウさんにつけられました。とても恐ろしくて今も痛いですが、壱の心の傷のほうが痛いでしょう」


俺はよろよろと立ち上がって牙城に言った。


「牙城。信濃と一緒に医療室に行くぞ。早く治療しないといけない……」


牙城が眉を思い切りしかめた。


「壱。何馬鹿なこと言ってるの?壱はルウちゃんを追いかけないと」


俺は立ち止まって信濃と牙城をみた。


確かにルウを追いかけないといけない。


けれど、何故か今はそうする気分ではなかった。


あの目をみたからか……。


何故かわからない。


それに、


「リドゥーって誰だ……?ルウ……」