[壱]
「私がヒドラと出会ったのは私が19歳の時でした。彼は雨の中、竜の地の門前でびしょ濡れになって立っていました。その時の目はとても暗かった。そうですね、例えるなら憎しみしか持っていない人の目、ですかね。私が少し近づいた時、彼はこう言いました。「人に置き去りにされた」ってね。私、思わず笑っちゃいました」
俺は首を傾げた。
今の言葉のどこに笑う場所があったのだろうか?
というかむしろ笑ってはいけない場所なんじゃ……。
ウイが優しく微笑んだ。
「だって、まるで捨てられた子犬みたいだったんですもの。だから私、思わず彼を拾っちゃいました。大型犬だったんですけどね」
ウイが少し癖のある笑い方をした。
「拾った時は猛反対されました。彼を家に連れて帰ると、皆に言われました。「人間なんか連れてくるな」「それは我らを殺す者だぞ」って。だけど、彼はこう言ったんです。「俺は人に置き去りにされた。だからもう人間ではない」って。そしたらどういうことでしょう。彼の髪色が赤と白銀の髪色に変わったんです。私、もう驚いちゃって。思わず彼に聞いちゃったんですよ。「それは何の能力ですか?」って。そしたら、彼も同じように敬語で返してくれて「能力ではないですよ。俺に能力なんてものはないですから。実は俺は竜の民なんです」って。彼と会ってから私は驚きっぱなしですよ。竜の民と人間のハーフがいたことなんて知らなかったし、ヒドラは前代未聞の竜の民だったんです。現に彼の髪色は白銀だったけど、何の能力も持っていなかった。けど、彼は武術に優れていた。能力もないのにとっても強かったんです。だんだんと民の皆は認めてくれるようになって、私が気づいた時には彼は竜の民の輪にすんなりと入っていました。彼は少し武骨だけどすごく優しいところがあって、人間の地に下りられない私たちのために代わりに地におりて食料とか、鉱石とかを調達してくれていました。ほんとお人好しな人なんです」
ウイの頬が少しだけ赤く火照った。
「でも、そういうところに魅力を感じたんですよね」
なんだかこっちも照れてしまう。
楽しそうに細められた目がまん丸く大きな目に変わった。
ルウと同じ目だ。
形のいい薄い桜色の唇が動いた。
「あなたはどうやってルウと出会ったんですか?」
俺は自分でも知らないうちに口を動かしていた。
「初めてルウをみたのは暗殺者としての仕事を果たすためにもらった一枚の紙だった。笑っているルウの顔をみたときは本当に何も感じなかった。その時の俺は恋とかそういうものに興味もなかった。ただ、仕事を果たすためだけに生きていたもんだった。次にルウに出会ったのは俺もよく通っていた和菓子屋でだった」
その場面を思い浮かべるかのようにウイは目を閉じた。
「私がヒドラと出会ったのは私が19歳の時でした。彼は雨の中、竜の地の門前でびしょ濡れになって立っていました。その時の目はとても暗かった。そうですね、例えるなら憎しみしか持っていない人の目、ですかね。私が少し近づいた時、彼はこう言いました。「人に置き去りにされた」ってね。私、思わず笑っちゃいました」
俺は首を傾げた。
今の言葉のどこに笑う場所があったのだろうか?
というかむしろ笑ってはいけない場所なんじゃ……。
ウイが優しく微笑んだ。
「だって、まるで捨てられた子犬みたいだったんですもの。だから私、思わず彼を拾っちゃいました。大型犬だったんですけどね」
ウイが少し癖のある笑い方をした。
「拾った時は猛反対されました。彼を家に連れて帰ると、皆に言われました。「人間なんか連れてくるな」「それは我らを殺す者だぞ」って。だけど、彼はこう言ったんです。「俺は人に置き去りにされた。だからもう人間ではない」って。そしたらどういうことでしょう。彼の髪色が赤と白銀の髪色に変わったんです。私、もう驚いちゃって。思わず彼に聞いちゃったんですよ。「それは何の能力ですか?」って。そしたら、彼も同じように敬語で返してくれて「能力ではないですよ。俺に能力なんてものはないですから。実は俺は竜の民なんです」って。彼と会ってから私は驚きっぱなしですよ。竜の民と人間のハーフがいたことなんて知らなかったし、ヒドラは前代未聞の竜の民だったんです。現に彼の髪色は白銀だったけど、何の能力も持っていなかった。けど、彼は武術に優れていた。能力もないのにとっても強かったんです。だんだんと民の皆は認めてくれるようになって、私が気づいた時には彼は竜の民の輪にすんなりと入っていました。彼は少し武骨だけどすごく優しいところがあって、人間の地に下りられない私たちのために代わりに地におりて食料とか、鉱石とかを調達してくれていました。ほんとお人好しな人なんです」
ウイの頬が少しだけ赤く火照った。
「でも、そういうところに魅力を感じたんですよね」
なんだかこっちも照れてしまう。
楽しそうに細められた目がまん丸く大きな目に変わった。
ルウと同じ目だ。
形のいい薄い桜色の唇が動いた。
「あなたはどうやってルウと出会ったんですか?」
俺は自分でも知らないうちに口を動かしていた。
「初めてルウをみたのは暗殺者としての仕事を果たすためにもらった一枚の紙だった。笑っているルウの顔をみたときは本当に何も感じなかった。その時の俺は恋とかそういうものに興味もなかった。ただ、仕事を果たすためだけに生きていたもんだった。次にルウに出会ったのは俺もよく通っていた和菓子屋でだった」
その場面を思い浮かべるかのようにウイは目を閉じた。

