太陽の竜と闇の青年

外にでて、またあの川辺に行った。


ウィン弟は川辺の水で頬の血を流す。


血は止まらない。


「大丈夫なのか?」


ウィン弟はジャブジャブと洗いながらもうなずいた。


「余裕余裕。竜の民って治るのが早いからね。そろそろ傷もふさがると思うよ」


ウィン弟の言った通り、さっきまでウィン弟にあった頬の傷はだんだんと薄れていき、何もなかったかのようなウィン弟の顔があった。


本当にウィン弟は竜の民なんだな……。


「ウィン弟……」


「フウでいいよ。なんかその呼び方慣れないから」


自分は小さくうなずいた。


「もう二度とルウを傷つけることはさせたくないんだ。僕がここまでルウにこだわるのはルウが家族だからじゃない、竜の民の神だからじゃない。ルウは……世界で一番可愛くて可哀想で憎いからだよ」


一瞬だけフウの目が何かを呪うかのように光ったのは気のせいだろうか?


いや、気のせいだと思いたい。


「ルウは……ルウの心はいつも言葉に隠れて黙ってたんだ。神様はなぜあんな深くにルウの心を作ったんだろう?」


いつも笑っている二人からはまったく想像できない運命だろう。


「この眼が二つだけでよかったなー……。世界の悲しみがすべて見えてしまったら僕は到底生きていけはしないから」


フウが自分の目を覆い隠した。


「もう疲れたんだ。竜の民の神として掟に縛られることも、自分が竜であることを認めることも……。もう嫌なんだ……」


フウが泣いた。


初めてフウが自分の目の前で泣いた。


怒った顔も強ばった顔も笑った顔もみていたけれど、フウの泣き顔だけはどうしてもみてはいけないものだと思ってしまった。


「フウ……。なぜ泣く……」


なぜ今泣くんだ。


お前は人前で泣いてはいけない人だろ……。


「どうしても叫びたくて僕は泣いているんだよ。どうしても気づきたくて僕は泣いているんだよ。……この世界の神が誰なのかを……」