太陽の竜と闇の青年

「今日はここまでにしておこう。多分今日は空が荒れるだろうし、ルウも……ね」


その瞬間、聞いてはいけない声を聞いた。


まるでそれは空を突き破るような痛々しいような叫び声。


だけどその声には聞き覚えもあった。


「まさか、ウィンなのか?」


ウィン弟は慣れたかのように走り出した。


自分も慌てて追いかけると、集落のウィンの部屋についた。


自分たちが部屋に入るのと同時に叫び声は止み、自分は光るウィンたちの体をみた。


「ルウ。うるさい」


「……」


「僕にまで迷惑がかかること、分かってやってるの?」


「……」


ウィンがこちらを振り向いた。


自分は絶句した。


ウィンの頬には鱗がビッシリとならび、鋭い八重歯がみえて、服からのぞいた手は竜のようにするどい鍵爪のついている大きな手だった。


ただ、赤い筋が一筋どこもかしこもついている。


頬にも、足にも、首にも、腕にも。


「ルウ、僕の体が痛い。骨が軋むだろ」


ウィン弟がウィンの竜のような手を掴んだ。


ウィンが何かに怯えたようにウィン弟を引っかいた。


ウィンの頬に肉を抉るような傷が出来た。


それでもウィン弟は痛がる様子もなくウィンを掴んだ。


「今度は何?何に苛ついてるのさ」


低いウィン弟の声が竜の唸り声のようにも聞こえ、ぞっとした。


「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!!!」


ウィンが暴れた。


「来るな来るな来るな来るな!!!!殺すな殺すな殺すな殺すな!!!」


ウィン弟がため息をついたとき、ウィンがピタリと喚くのをやめた。


「……そっか。殺せばいんだ。私が殺してあげれば誰も争いをしなくなる……」


ウィン弟の眼が黒光りした。


ウィン弟はウィンを押し倒した。


「馬鹿いうな。お前、大量殺人は二度と繰り返したくないと言っていただろ?冗談でもそんなこと言うんじゃない。今、人を殺してもルウにはなんの利益もない。ここはアソコとは違う。ココには人間はいるが、アノ人間は存在しない。ルウ。落ち着け。バカルウ」


長い間そうウィン弟がウィンに話しかけた。


だんだんとウィンの手が人のものに変わっていった。


「……あれ?フウ。どうしたの?」


先ほどの叫び声が嘘だったかのようにウィンは素っ頓狂な声をあげた。


「うわっ!頬、傷ついてるじゃん!!」


ウィン弟がウィンから身を離し、小さく微笑んだ。


「ちょっと事故っちゃってね。ちょっとルウの部屋に取りにきたものがあったんだけどなかったからいいや。じゃぁね。おやすみ」


ウィンも小さく笑った。


「うん。おやすみ」