太陽の竜と闇の青年

ウィンが顔を両手で覆った。


「私とフウは、なりたくて竜の民の神になったわけじゃない。普通の竜の民として生まれたかった。何度もそう思った。本当は少し気づいていたよ……。この本をもらったときから、祖母が人間に力を貸し、人間と竜の民との間で戦争が起こることも。でも、現実から目を背けていた。本当に戦は起きてしまった。一〇〇年後の世界にきてみれば、地は人間が全てを支配し、空は神しか存在していない。竜の民の居場所は、どこにもなかった」


ウィンが今どんな表情をしているのか、分からなかった。


けれど、悔しいくて、悲しくて、人間を憎んでいるだろうと思った。


「戦とは……どういうものなんだ?」


ウィンの手がピクリと動いた。


沈黙が自分とウィンを包み込む。


「何が起こったのか、良く解らなかった。泣き叫ぶ人たちの声と焼けた屍肉が転がって、何が襲ったのかもよく解らなかった。それぐらい、戦は突然起こるんだよ。竜の民の神が人間に手をかした数日後に起こるんだ」


フワッと小さく風が吹いた時、ウィン弟が自分たちの後ろにたっていた。


「フウ……」


ルウが顔をあげる。


複雑な表情をしていた。


笑ってもいいのか、いけないのか。


泣いてもいいのか、いけないのか。


憎んでもいいのか、いけないのか。


そんな顔だった。


「ルウ。シルバは信用できるんだね。信用できるから本を見せたんだよね?」


用心深くウィン弟がウィンに聞くと、ウィンは小さくうなずいた。


「うん。できる」


その言葉に自分は安心した。


自分は唯一この二人の秘密を知っている。


少しそのことがこそばゆかった。


「ルウ。もう部屋に戻りな。戦のことは僕が話しておくから」


ウィンは小さくうなずくと、自分の手から水桶を取って、集落へと戻っていった。


ウィンが集落へと戻っていったのを確認したウィン弟が、自分の隣に座った。


小さくだけど、笑っている。


「やっぱりシルバには気づかれてたかぁ。やっぱあれ、シルバだったんだー」


「あれ?」


「うん。竜の目はいいからね。見張りしてたのってシルバだよね?」


「あぁ。自分だ」


「やっぱりー。誰かに言うんじゃないかって不安に思ってたから。でも、大丈夫だったねー」


クスリと笑った顔はウィンに似ているのに、どこか似ていなかった。