太陽の竜と闇の青年

俺はそう思いながらもマランに聞いた。


「ヒドラは何の罪をおったんだ?」


ヒドラは顔を歪めた。


「アレはあいつがやったのかも怪しい。ヒドラは人間を大量に殺してしまったんだよ。すべての国の王を殺した。大量殺人の罪人だよ。それには正当な理由があった。国の王は竜の民の神のウイを殺そうと考えていたんだ。それをしったヒドラは逆上して王を殺した。だから言ったろ?人ではなく、竜の民のをとったってな」


ふっと隣に目をやった。


それに気づいた朱雀がすかさず読んでくれる。


「……ヒドラの最高の友、ヤッカル?」


ヒドラの最高の友……。


さぞかし二人は仲がよかったんだろう。


「それだけじゃないぜ?」


マランが俺の心を読みとったのか、帽子を深く下げてニヤリと笑った。


「こいつは歴史上無名の男だが、俺らにはヒドラと同じ英雄だ。たった一人で「暗黒」いや「世界」に反逆した反逆者だからな」


テルが驚いた声をだした。


「世界の反逆者!?」


「あぁ。ヤッカル。こいつは本当にヒドラを大切としていた。ヒドラは死ぬ時、誰にも助けを求めなかった。竜の民は人間の地に下りることは決してしなかったからな。自分が捕まるから。けど、ヤッカルだけは違った。ヒドラを助けるために竜の地から人間の地に下りてきたんだ。たった一人で。たった一人で人間と戦った。だが、ヒドラは死んだ。ヤッカルの伸ばした手は届かなかった。それでもヒドラは笑っていたんだ。最期にヤッカルにこう言った。[俺の大切な家族を、竜の民を頼む。血生臭いこの世界を変えてくれ]ってな。最期まであいつは自分のことじゃなくて、憎たらしい人間までもを気にかけていたんだ。ヤッカルはよく言っていたよ。[ヒドラを「悪」だというのならば、俺はそんな「暗黒」は認めない]ってな」


俺は小さくうなずいて、ウイの墓の前に座った。


どこからか花の匂いがした。


ウイの墓の後ろには大きな一本の新緑の木が立っていた。


スッとウイの墓に手をやり、目を伏せる。


周りの音もすべて消えた。


ただ自分の手だけに神経を寄せた。


そのとき声が聞こえた。


「二人に罪はないの」


鈴を転がしたような聞きやすく、落ち着く声。


少しルウに似ている気がした。


ハッとして目をあけると強い風が吹いた。


その風は春の匂いがした。