太陽の竜と闇の青年

私が頬を膨らませたとき体がグンッと引っ張られた気がした。


白虎が階段を猛スピードで走り始めたのだ。


私が顔をひきつらせたとき、隣でブッと噴出する音がした。


「ルウ……お前、すっげぇ顔してたぞ」


「う、うるさい!」


私は壱をキッと睨んだ。


それにしても……。


やっぱり二人は慣れているのか、汗一つかいていない。


「疲れていないの?」


「疲れているよ」


「疲れていますよ」


二人は声を重ねて言った。


でも、まったくそんな感じはしなくて……。


「棒読みで言わないでくださーい」


私がそういうと、二人は、ハハと笑った。


「実は疲れてねぇよ。そんなにあがってねぇと思うし」


壱の言葉に白虎もうんうん、とうなずいた。


「神の俺ならこれぐらいの螺旋階段は平気なんです。ですが、生身の人間でこれほどの螺旋階段を楽々と上がれるのはきっと壱だけでしょう」


私が感心して壱をみると、壱は何ともいえない表情で頬をかいた。


意外と照れ屋……?


私が微笑を浮かべたとき、白虎の足がピタリと止まった。


「どうしたの?」


私がそう訪ねたとき、白虎が髭をピクッと動かした。


「何か、聞こえませんでしたか?」


私が首を傾げたとき、ぐぅぅぅぅという低い動物のうなり声が聞こえた。


「コレのことか?」


壱がニヤッと笑った。


「あぁ。コレのことだ」


白虎も笑う。


「えっとー……」


私が頭をポリポリとかいたとき、いきなり黒い何かが出てきた。


「でたあぁぁあぁぁぁぁぁ!!」


私は思わず隣にいた壱に白虎から飛び退いて抱きついた。