太陽の竜と闇の青年

[壱]


大きな銅の扉にもその血はベットリとついていた。


そして自分の足下をみてみると、そこには大きな手があった。


ゆっくりと顔をあげて、もう一度今ある世界をみてみた。


「……ウィン?」


シルバが愕然とした声を出した。


フウはもう放心状態といったほうがいいのだろうか?


そんな感じだった。


俺も気持ちもそうしたかった。


だけどこの世界を止めなくてはいけないだろう。


ルウが殺し続ける世界を。


そのとき男が俺たちの目の前に降りてきた。


俺たちには注意も向けず、突然現れた巨大な鬼に向かって鎌を振りあげた。


その鎌はきれいに鬼の首を斬った。


鬼はうめき声も「あ」の言葉も言わずに首を跳ねられ死んだ。


「超鬼だが何だかしらんが、鬼にたてつくとはいい度胸してるではないか?」


ニヤリと笑った悪魔のような男は超鬼の顔を蹴った。


「鬼にたてつけるのは、アイツだけだ」


悪魔が目線を送った先には自分の頬に散った血を拭い取っていたルウがいた。


「……で?貴様らも鬼にたてつくものか?」


いつの間にか、俺たちの首元には鎌の鋭い牙が向けられていた。


バカでかい鎌だな……。


だけどそんなこと死んでもいえなかった。


あと数ミリ動かしただけで俺たちは死んでしまうからだ。


「違う。僕たちは君たちを手伝いに来たんだ」


男はフッと鼻で笑った。


「手伝い?そんなもの鬼たちには必要ない」


瞼をあげた左目の中には太陽の不思議な文様が黒で描かれていた。


それが何なのか聞く前に俺たちは強風に煽られて扉に背をぶつけた。


「いっつ……」


「ってぇ……」


「……」


……この風はなんだ?


前をみるとそこには男の姿はなかった。