太陽の竜と闇の青年

「ヘルに勝てる訳がない。ウィンはヘルに命を渡しているんだぞ」


渡しているんではない、渡してしまったのだ。


「あぁ。だから時間の問題だろう」


ルウの命がヘルによって潰されるのか、それともルウがヘルの心臓を貫いて殺すのか。


どちらが一秒でも早ければそれで勝負がつく。


そのときシルバが足を止めた。


「どうしたんだ?」


俺がシルバを見下ろすと、シルバは自分の胸を押さえた。


「ちょっと待て。おかしくないか?」


俺は眉をひそめた。


「何がだ?」


「ヘルがウィンと戦うのなら自分の命を握りつぶすはずだ。ウィンは自分を助けようとしているんだから。ヘルは頭がすごくきれる奴だからそれぐらいすぐに分かるはずだ。だけど自分の心臓は痛くもかゆくもないんだ」


シルバの言いたいことが分かった気がして、俺はシルバの胸元をはだけさせた。


「刻印が……ない!!!!」


驚いたのは俺だけではなくシルバもだった。


「まさか……。さっきのヘルとウィンの約束って、自分とウィンの刻印を消すことだったのか!?」


シルバはありえない、という信じたくない顔になっていた。


「だとすれば、ルウがヘルに恐怖を抱いていないことも合点がいく。なるほどな……」


俺がそう言うとシルバがつぶやくように言った。


「この刻印がなければ自分がヘルの部下になる意味はない……。つまり……。好き勝手にやっていい、ということか?」


俺はシルバをみた。


シルバの目にはさきほどのような感情の目ではなかった。


何かを決心したかのような目だった。


「シルバが今何を考えているかはわからないが、俺と考えは一緒だろう。一緒に行くぞ」


俺が少しだけ力強く言うと、シルバはうなずいた。


「あぁ。行こう」


シルバの返事をきいた俺たちは急いで階段を駆け上った。