太陽の竜と闇の青年

その瞬間、後ろから強烈な香水のにおいがした。


これは……。


振り向かなくても分かる……。


私は反射的に壱の後ろに隠れた。


「き、貴様ぁぁぁ!!許さぬ!!余のルウを奪おうとするでない!!」


シャナがビシッと壱を指さした。


壱は小さくため息をついた。


「ご、ごめんね……?」


私は小声で壱に謝った。


なんか、壱にすごく悪い……。


壱は肩をすくめて、また小声で返してくれた。


「別に。どうということはない」


シャナが考える人のような格好をした。


「なぜだ……。なぜなのだ!!余はこんなにも魅力的だというのに!!なぜ、ルウは余に振り向かないのだ!!やはり、余が魅力的すぎるからなのか……?」


……頭おかしい……。


絶対におかしい。


頭のネジが5、6本抜けているとしか思えない。


「あのさぁ、さっきも言ったとおり、シャナと壱だったら絶対に壱のほうがマシなわけー。つまり、シャナは絶対に壱には勝てないって意味。お分かり?」


フウがあっはっはー、と笑いながら近づいてきた。


シャナはフウが苦手なのか、顔をしかめた。


「ウィン=フウ。なぜ毎回毎回余の邪魔ばかりするのだ!はっ!もしかして、フウは余の格好良さに嫉妬をしておられるのか……。それならば、フウが余に冷たく当たる理由が分かるのぅ」


フウの口の端がヒクヒクと動いた。


そして、私の側に寄って小声で私と同じことをいう。


「アイツ、頭のネジ10本、いや20本ぐらい抜けてるんじゃないの??」


同じ、といっても、本数はフウのほうが多いけど……。


「うん。絶対、正常ではないと思う……」


壱がふぅ、とため息をついた。


それから、私を担ぎあげた。


「うひゃぁ!!」


私は変な声を出してしまう。


フウが、おっ、という顔になっていた。


「壱、どうしたの?」


「シャナが面倒くさい。さっさと屋敷へ行かせろ」


壱はシャンリンに向かって堂々と言った。


シャンリンにそんなこと言ったら、シャンリンに殺されちゃう……。


けど、私の不安とは裏腹にシャンリンはあっさりとうなずいた。


「えぇ。いいですよ。ルウお嬢様のためですものね。シャナ、もう気はすんだでしょう?さっさと帰りますよ」


さすがのシャナもシャンリンには口答えできないのか、素直に従っていた。