太陽の竜と闇の青年

「危険な道具?そんなものどこにあるの?壱が何の能力を持っていようが壱ってことには変わりはない。それに、壱は人でしょう?道具は言うことを聞いてくれないかもしれないけど人はきちんと心を持っている。壱だって持ってるじゃん。心。外見は仏頂面だけど中身はすごく優しいんだから。傍に置いておける自信があるかって?そんなもの最初っからあるに決まってるじゃん。壱が仲間になったときから傍に置いておける自信は100%あったよ」


そのとき、宿屋の外で


「ただいま帰りました~」


というラカの声が聞こえた。


「僕が行ってくる」


フウが私の返事も待たずにスタスタと出て行ってしまった。


何故か故もついていく。


私が壱の頬から手を離すと、ガシッと手を掴まれた。


それからグイッと引っ張られて、抱きしめられた。


「え、ちょっと、どうしたの!?」


私が驚いてあたふたしていると、抱きしめている壱の手に力がこもった。


「俺はずっと待っていたんだ。俺を、必要としてくれる人たちを」


私はスッと壱の顔をのぞき込んだ。


壱は泣き笑いのような顔で私をみた。


「だから安心した。俺はここにいてもいいんだって」


私は壱の背中に手を回した。


外ではフウたちが離しているのが聞こえる。


時計のカチカチという音も聞こえる。


壱の匂いがする。


とても、いい匂い。


「ありがとう」


壱が小さく私の耳元でささやいた。


私はうん、とうなずいた。