太陽の竜と闇の青年

それから、私にポイッと何かを放り投げてきた。


私は不思議に思いながらそれを受け取る。


薄い紅色の布にくるまれていた。


「これ、何?」


壱を見て聞くと、壱は覆面を取りながらクールに言った。


「兎餅だ。九尾を蘇らせる前に食べておけ。少しは気持ちが落ち着く」


……緊張してたの分かってたんだ。


壱の観察力に驚きつつも、どこか惚れ惚れする部分があった。


初めて会ったときから思っていたけど、壱は少しだけアージュに似ている。


だからだろうか……。


堂々と壱の顔をみれないのは。


「あ、ありがとう」


少し照れ笑いしながらも薄い紅色の布を解く。


その中には、兎の形をした可愛らしい白色の餅が置いてあった。


私は兎餅を口にする。


ふんわりと甘く優しい味が口の中を埋め尽くす。


私の緊張もだいぶ収まってきた。


私は祠の前に座り、笛を口に当てた。


それから、器用に丁寧に音を奏でていく。


この聖人歌という曲は神様を尊敬して作られた曲で、初めから終わりまでずっと大人しい音調。


少し吹くのは難しいけど、今日はなんだか自信がある。


壱だって付き添ってくれている。