その日の夜、僕はあの森に向かっていた。
僕が唯一勝てなかった夜の森へ。
「この先に、何があるんだ……?」
僕は決心を固め、一歩森に進んだ。
けど……。
足が動かない。
いや、僕は動かそうとしているのに、何かに捕まっているかのように動かない。
……これは、どういうことだ?
僕は、足下をみた。
「うわっ!?」
僕は思わず声をあげてしまった。
だけど、誰でも驚くだろう。
何で僕の足下に赤い文字で呪絵が描いてあるんだ。
僕は必死で足を動かそうとした。
が、その時、前方からザッザッという足音がした。
……壱ではない。
壱はもっと静かに歩く。
そう、まるで気配をなくすように。
「……誰だ」
僕は声を低くして暗闇に向かって静かにたずねた。
すると、
「いっひっひっひ」
という不気味な笑い声が聞こえた。
気持ち悪い。
危険なヤツだ。
僕は直感的にそう感じた。
「久しぶりの獲物だぁ。若い子がとれてるじゃないかい」
暗闇からでてきたのは、黒の浴衣を着ている50代の男だった。
「どういう意味だ?」
僕は腰につけてきた用心棒の小太刀を手に取った。
「まぁまぁ、落ち着きなさい」
こんな状況におかれて落ち着けるやつがどこにいるというんだ。
まぁ……。
ルウなら落ち着きそうだな。
ルウは、その場に合わせて動くタイプだから……。
僕は目をキッとつり上がらせて、男を睨んだ。
けど、男は一層楽しそうに笑った。
「いーっひっひっひ!!その目、いいねぇ……。その顔いいよぉ……。もっと憎悪を増やしてくれよぉ」
……おぇ。
ルウがここにいなくてよかった。
教育上、[変人]、[変態]っていうものは、ルウには見せてこないようにしてきた。
おもに、変人っていうのは、コイツのことで、変態っていうのもコイツのこと。
ってか、僕、今そんなこと考えているときじゃないんだけどね。あはは。

