太陽の竜と闇の青年

ルウが来たことには正直驚いていた。


どこに行くのかも伝えていなかったのに、どうやって王宮にいたのか分かったのか。


でも、それを聞いたらたぶんルウは


「勘!」


と言うだろう。


俺はそんなことを考えながら、フウの世話をしているジンの風景をみた。


「フウは大丈夫か?」


俺がそう聞くと、ジンは渋面を浮かべて言った。


「……微妙なところですね……。熱が高すぎます」


俺はそうか、と言って立ち上がりフウの傍に近づいた。


ジンが考え込むように言った。


「フウさんはなぜ、あそこまで王族、つまりわたくしたちを恨んでいるんでしょうか?」


”俺たちの心には一生消せない傷が残った。俺たちは一生王族を恨む。たとえ、自分たちが王族になってもだ ”


フウが叫んだ言葉が俺の頭の中に木霊した。


奴隷制度を撤廃しても、奴隷だった者に残る傷は、深く、激痛のように痛い。


フウたちが王族を嫌う理由は分かっていた。


それは、ジンも同じだ。


だが、あえて質問した。


何で俺たちを恨んでいるのか、と。


「少し心の距離が縮まったと思ったが、まだかなり遠いところにルウやフウたちはいるんだな」


ため息まじりにそう言うと、ジンが微笑しながら言った。


「そうですね。それにルウさんも、坊ちゃんを婚約者と認めていらっしゃらないですし……。坊ちゃんも大変ですね」


そう。


ルウはまだ俺を婚約者と認めていない。


つまり、俺とルウはただの友達ということになるのだ。


俺としてはルウが婚約者なのはとても喜ばしいことだが、ルウの心は何だか、俺じゃなくて別の誰かにあるような気がする。


いや、それ以前にルウには恋愛感情というものが無いのか?


そのとき、


「……うっ……」


と、フウが小さく呻いた。


「あ、フウさん。大丈夫ですか?気持ちが悪かったりとかしますか?」


ジンが慌ててフウにそう聞くと、フウはうっすらと目を開けて言った。