「あぁ、何……またあなた?」

私が眉をひそめると、アザールも同じように眉をひそめた。



「あぁ、何。とは何だ」


「あなたが失礼な人だから、反応に困っただけよ」


吐き捨てると、彼は不機嫌丸出しになり、足を組み直して言った。


「そなたがあの時気絶したから、私がここまで運んでやったのだぞ。感謝しろ」

事実を知った私は、目を丸くした。



(そういえば……)


意識を手放す寸前、アザールが抱きとめてくれたのを思い出す。



さっきの態度は、助けてくれた人にとるものではない。


ほんの少し表情を和らげると、アザールに一礼をした。



「……ありがとう」

「礼を言われるほどの事はしてない」

そう言ってそっぽを向く姿が愛らしく、思わず笑みを零していた。