入学式に、列で並んでいたとき。先輩たちが新入生を並べている中、僕は何処に並べばいいのか迷っていた。
……そこ、どんくさいとか思っちゃダメだよ。
「んー…………」
不意に、聞こえ声。
「?」
振り返ると、そこにはしゃがみ込んでなにやら落ちた花を取ろうとしている神納さんがいた。
(っていうか、動いてる人混みの中でそんなことしてたら、手とか踏まれちゃうでしょ!?)
そう思って、慌てて自分の服に刺さっている人工花を抜き取り、彼女に差し出した。
「はい。」
そう言うと、神納さんは驚いて振り返り、「………え、」と呟いた。
あ、声可愛いな。
そんな場違いなことを考えながら、僕は神納さんに花を半ば押し付ける形であげた。
……なんかその時、かなり恥ずかしくてクサイ台詞を吐いた気がするけど、気にしない気にしない。というか、忘れたい。
神納さんはなぜか少しの間固まっていて、そしてゆっくりとそれを受けとってくれた。
「ありがとう。」
……笑顔で、そう呟いて。
「………っ!!(か、可愛っ!!)」
(―――あの笑顔は本当に可愛すぎて死ぬかと思った…………!!)
僕はその笑顔に見とれて、一瞬固まってしまった。
が、直ぐに建て直して、なんとか平静を保ってその場から離れた。
それから家に帰るまで、僕の心臓は忙しなくドクドクと動いていた―――。
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