その時、誰かの手が私の唇を触った。 「噛まないで…」 『沖田さん……』 彼の目は、私の唇を見ていた。 冷たい手がひんやりと、私に伝わってきた。 私は、ただ彼を見つめることしかできなかった。 噛まなくなったことを確認すると、 何も言わずに自分の席へと戻っていった。 まだ少し、口の中は鉄の味がしている。