高校の頃、私は友達の彼氏を横取りした。

私一人悪いわけじゃない。でも、あいつの友達はもちろん、私だけと仲良かった子まで

も、私が悪いと言い、私から離れていった。

そして、卒業するまで、私は、ずっと1人だった。

あいつも悪いんだ。わたしが彼のことを好きだと知りながら、彼に告白したんだから。

私の目の前で。

わざとらしく。


どっちもどっちなのかもしれない。

こういうのを「どんぐりの背比べ」というのだろうか。

そういえば、そろそろ、園のブナのどんぐりも、落ちてくる頃だろう。

ああ、また、ちびどもから、抱えきれないほどのどんぐりを貰うのだろうか。

はあ。考えるだけで面倒くさい。

そう思いながら、園庭の隅のブナの木の下へ行った。

そして、携帯を開く。

アドレス帳には、ほんの数件しかないプロフィール。

その中に「山野 サナ」という名前がある。さっきの「あいつ」の名前だ。

嫌いなくせに、なんでメアドなんか持っているんだ、と思うかもしれない。

私だって、何度も削除しようとした。でも、「一件、削除しますか」という問いに、

私は、一度も「YES」と答えることができなかったのだ。自分でも、何故だか分からな

い。


名前は、いつでも浮かんでくるのに、いつまで経っても思い出せない顔。

スタイルが、抜群によかったことだけ、よく覚えている。

それから、いつもより、半オクターブ程高く、甘い声で言っていた、告白。

忘れたい。早く忘れたい。でも、忘れられないんだ。


あいつのメールアドレス。

もしかしたら、今でも送れるのかもしれない。

でも、やっぱり、変えているかな。

それも、十分有り得る。っていうか、そっちの方が、確率が高い。

変えていなければいいな、と思っている自分に、心の自分が、

変えられて当然のことした癖に、と答える。まあ、確かにそうだな、と返事をする。

最近、自問自答が多い。そんな自分がとても可愛そうに思える。


あいつ、元気かなあ。


元親友。元になってから3年程経つが、やはり、少しは気になる。

立ち直れたカナ(自分が立ち直れなくしたくせに)

彼氏つくれたかな(彼氏取ったのは、自分のくせに)

ああ!!!うるさいうるさい!!!、と、いちいち文句を言う自分の心に切れた。