「葉月」

「…えっ」




思わずハッとして振り向くと背後に立っていたのは、私より頭が2個分くらい上の方にある、小さく整った顔。



「これ、文化祭の出し物の進行表」



ヒラヒラ~っと紙を顔の近くで揺らすと、私の頭の上に置いた。

「え、ええ!」

薄い一枚の紙で、バランスなんて取れるはずもなく

あっけなく空中に舞い落ちる



「それ見て指示だしとけよ」




そういって、私の頭をくしゃっと触った。

えっ…

私一人で……!!

くしゃくしゃになった髪を右手で少し整えながら下に落ちた紙を拾っていると、顔を上げたときにはもうそこに一ノ瀬くんはいなくて

ムッと顔をしかめる。




…でも



指示って、何を出せば……

渡された紙の束を捲って見ると、中に書いてあるのは実行委員の活動内容だけ

各クラスのことなんて、何も書いていない

とりあえず、今は必要な器具や材料を運んでもらってる…けど

次の指示なんて、聞いてないし…



肝心の一ノ瀬くんはふらっとどこかへ消えてしまうし

何をすれば……





オロオロした足取りで教室を歩いていると、放送が流れた。