「ケータイ出せよ」


「……へ?」


「いいから出せ」




ケ…ケータイ?

ちょ……今まで、係り決めの話し、してたんじゃないの……?

ぽかーんと口を開けていると、親指と人差し指でおでこにデコピンをされた



「痛っ」


「はやく」



……え?

どっどうしてケータイなんかを……

頭の中に「?」を浮かべながらも、鞄の中からケータイを取り出す



「えっ…えっと……」



恐る恐る視線をあげると、手に持っていたケータイをぱっととられた。

手馴れた手つきで操作し、ピロリンと光る。

静かになった教室に響くのは、ピピピッという合図の音だけ



「ほらよ」




そういうと、放物線を描いてケータイは宙へと舞った

「わわっ!」

慌てて手をのばしてキャッチし、画面をつける



「……?」




ディスプレイに表示されているのは、‘一ノ瀬 棗‘ の文字と、見慣れない携帯番号とアドレス



「登録、してやったから」






つーか、あれだろ?お前トロいから、呼んでも聞こえてなさそーだし







「俺がわざわざやってあげたんだから、感謝しろ」






ゼッタイメイレイ






この言葉がある限り、一ノ瀬くんの思うまま



きっと私は、ただの壊れた操り人形