加瀬のパソコンがメールを受信したことを告げた。同時に放り投げていた彼の携帯が鳴る。
 楽しく行ってきた作業を中断されて加瀬は舌打ちをして通話ボタンを押した。
「加瀬さんだね?」
 機械的な性別も判らない声が受話器の向こうから聞こえてきた。
「あんた誰だ?」
「誰でもいい、パソコンのメールを見てみろ」 相手の声が受話器から聞こえると何もして利ないのにディスプレイに受信したメールが開かれていた。そこに一人の少女の映った画像ファイルが映し出されていた。
「どうだい、あんたの好みの子だろう?」  受話器の向こうの人物が含み笑いをしているのが加瀬には判った。
 そこに映っている少女は確かに加瀬の好みだった。髪がショートカットなのはいただけないが、真面目で大人しそうな雰囲気だった。 何よりも目が良い。くりくりした瞳が輝いている。制服を見るとそれは加瀬がよく知っている学校のものだった。
「これがなんだというんだ」
「その子を二、三日どこかに連れ回して欲しい」
 加瀬には相手が何を言わんとしているのが判らなかった。
「あんた、車を持っているだろう?」
 確かにぼろぼろの中古車だったが、加瀬は間違いなく車を持っていた。だが、何故それをこの相手は知っているのだろう?こちらは何一つ相手のことが判らないのに…。
 そんな加瀬の不安をよそに向こう側の声は続ける。
「その車でその子を連れ回して欲しいんだ。その間、あんたはその子に何をしてもいい」 しかし、加瀬は気が弱い。
 向こう側の声のいうようなことは出来はしない。
「そんなこと、出来るわけないだろう」
 加瀬の古葉を聞くと声は含み笑いをして言った。
「大丈夫だ。あたしの言うところでやれば誰
にも見つかることはない」
 声は自信ありげに言った。
 その力に負けたのか、加瀬は提案されたことを承諾して再びディスプレイに映った少女の画像を眺めた。
 そこに映っているのは美鈴の画像だった。