踏みにじられた生命~紅い菊の伝説1~

 ひとしきり考え込んだ後、小島が自信なさげに言った。
「係長、日記にはあと一人名前が書かれている生徒がいます。彼女のところにはきっと犯人が現れるはずです。いっそのことその瞬間を抑える、その手はいかがでしょう?」
「その子を囮にする、ということか?」
「ええ、今のところ犯人に近づく方法はそれしか考えられません。勿論その子の安全は確保した上ですが…。」
「そんなことは指示できない」
 暫く考え込み太田は応えた。
 手詰まりになってしまった。
 それはそこにいる誰もが感じたことだった。