夜の刑事課。
 小島と恵が今日の報告を太田にしていた。「そうか、アリバイがあったか…」
 小島は吉田家での話の内容を太田に報告した。前回の訪問では吉田夫妻は間違いなく反抗に対してクロだという過食を得ていた。太陽の良くない美子は無理だとしても夫の昌子であれば充分犯行は可能であるし動機も充分にあった。また少女達に殺意を抱きそうな人間が他にいないという状況も手伝っていた。
 それが勇み足を踏ませてしまったのだろう小島にしては珍しいことであった。
 では、彼等が他の人間に乗除達の殺害を依頼した可能性はないのだろうか?小島はそれを考えてみたが小島家の経済状況を考えてもそれは難しいだろう。今のところ犯行を匂わす人物はいなくなってしまった。
だが、彼女達の携帯電話に残されていたメールの内容が殺されていた少女達に対して特別な感情があるということを示している。そして今回再確認した沙保里の日記に殺された三人の名前が記されていたこともそれを示唆している。
 これまでの犯行が怨恨によるものだということが濃厚になった。捜査方針をそれ一本にしても良い環境が整ってきた。
「まあ、任意で引っ張らなくて良かった、問いいうことだな」
 太田は自分の判断が間違いなかったことに安堵していた。
 それならば、あの黒い人物は誰なのだろう。 犯人と思われる人物と接触した時、相手は前進黒い容貌であり、人物像を特定できる特徴は何一つ得られないでいた。それどころか男女の区別すらついていないのだ。このような状況になると犯人を追跡するのは困難であることが彼等には判った。
 太田達は考え込んでしまった。
 刑事課のある室内は静かだった。
 壁に掛けてある時計が時を刻む音が聞こえるほどだった。