伊本彩花は三上響子の家を後にして家路についていた。街灯が少なく薄暗い道を家々の明かりを頼りに歩いて行く。心細い道のりだった。
 秋の虫の音が彩花を包むように鳴いている。弱い風が頬を撫でていく。家まであと五分くらいだ。彩花は足を速めた。それに合わせるように後ろから足音が聞こえてきた。気のせいだろうか?彩花は歩みを遅くしてみた。後ろの足音も同じように速度を落とす。気のせいではない。彩花はの背中や首筋は水をかけられたように冷たくなっていった。
 恐怖を感じた。
 それでも後ろを振り向くことは出来なかった。早くここから離れなければ。彩花の心が告げていた。
 彩花は心の中で悲鳴をあげ、走り出した。 その時、鞄の中で彩花の携帯がなった。
 彩花の耳にその音は届いていたが、それに構っている余裕はなかった。
 けれどもお構いなしに鞄の中の携帯は受信したメールのメッセージを表示していた。
『私は殺された。
   だから、おまえを殺す。』