公園の辺りは何故か該当が少なく、周囲の家の灯りも消えている方が多く、誰かが居たとしても影として認識することしかできない。
「気のせいか」
 響子はまた前方を見た。
 その時、
 ビュン、ビュン、
 何か、重しをつけたロープのようなものを振り回している音がだんだん響子の背後から近づいてきた。
 響子の胸の中に冷たい塊が生まれた。其れは全身に一気に拡がり震えが走った。

 逃げだそう。
 響子がそう思ったたとき、鞄の中に入れてある携帯電話が鳴った。どうやらメールを着信したようだ。鞄を開け、携帯を開き、ディスプレイを見ると、響子の顔は曇った。
『私は殺された。
   だから、おまえを殺す。』
「何これ、悪戯?」
 響子はメールを消去しようとした。けれどもそのメールはどんなことをしても消去できなかった。
 その時、背後から声がした。
「待たせたな、殺しに来たよ」
それは男の声とも女の声とも見分けがつかなかった。男女の声が混ざっていたようにも聞こえた。
 響子は走り出そうとして足下の石に躓き、公園の入り口付近にあるコンクリートの上に倒れ込んだ。
 風を切る音が響子の頭上で何度も何度も鳴っている。
 そしてある瞬間、ビューンという大きな音を立ててしなやかな紐状のものが響子の首に巻き付いた。その紐状のものは首の後ろで交差され、左右にものすごい力で引っ張られていった。
 息ができないために響子は必死で巻き付いている紐を取り去ろうと必死に引っ掻いた。
 力はさらに強くなり、やがて響子の足がゆっくりと宙に浮いていった。
「地獄でお前を待っている」
 動かなくなった響子の亡骸に向かってそいつは冷たくそう言った。