毎日同じことの繰り返しの日常の中で充分な刺激なのだ。数人はインタビューに応えていたようだ。そのことを自慢げに話す者やそれを羨ましく思う者の言葉で溢れている。
 皆、興奮していた。
 それは教室に入っても同じことだった。
(人が一人、殺されているっていうのに…)
 美鈴は溜息をついて窓側の席に着いて、確認するように窓の外を見下ろした。数台の車両はテレビ局の者だった。その中に新聞社、週刊誌の記者達が紛れているようだ。
 佐枝はまだ興奮しているようだ。背中越しに彼女の気配が感じられる。
「おい、お前らもインタビュー受けたのか?」
 校門前のざわめきのことを言っているのだろう、義男が二人に近づいてきた。その表情は興奮していることを隠しきれずにいた。
「杉山君、あなたまさか受けたの?」
「当たり前だろう?テレビに出られるチャンスなんだから」
 当然のことだと言いたげに義男は答えた。
 後ろの席でさえが同意するように首を縦に振る。
「呆れた、人が一人死んでいるんだよ」
 美鈴は義男を睨みつける。
 義男は脅えたような仕草をした。勿論本気ではない。
「啓介は受けなかったんでしょうね?」
 美里はそこから離れている自分の席に鞄を置いたばかりの啓介に視線を移した。
「いや、俺は受けていない」
 啓介は不機嫌そうに答えた。
「まったく、鏡は真面目なんだからな」
 義男はそう言い捨てて自分の席に戻っていった。美鈴は呆れたように義男義男の動きを追った。。その後に彼女は視線を移し、三上響子の席だったところを見た。今朝は何の気配も感じられない。昨日の影は微塵も見えなかった。