無茶苦茶な、話を聞かされている。

 織田さえも、直接手出し出来ないようなバックを──解体した?

「私は、織田は知りません…いえ、知りませんでした。ここで働くようになり、あなたに聞いてから調べました」

 アキが、見る。

 絹を、見る。

 まっすぐというより、直線の目。

「そして相対的に、私の家が一体何だったのかを知りました。何故、鍛え続けなければならなかったのか」

「何故、すぐに朝様が私を雇って下さったのか」

「何故、子供の頃の記憶が歪んで見えるのか」

 直線の言葉。

 絹に向かう、重い槍のような声。

「私は、何の保護もなく生き残れる人間になるため…強くならなければなりませんでした」

 陽が、見える。

 重い言葉の向こう側に、その目の奥に。

 地から天を目指す──迷いのない目だ。

「こうして私は生きています…古めかしい組織などなくても、何ら問題などありません」

 アキの迫力と、周囲から押し寄せる断片の情報が、絹の思考を妨げる。

 本当は、彼女が何者なのかまでは理解出来ていない。

 ただ。

 使うものでもなく、使われるものでもなく。

 ただ、アキは──立つものだと分かった。

 行くものだと分かった。

 そうだ。

 広井の人間たちも、陽属性。

 立つものであり、行くもの。

 アキに見えたものが、彼らにも見えるはずだ。

 同じ系列の人間。

 同じ種の。

「あなたは広井の男達に、助けを求められた…応えますよ、彼らは」

 要は。

 アキの唇が、ゆっくりと動いた。

「要は…織田ではなく…その組織が、なくなってしまえばいいのでしょうから」

 迫力を押し込めるように、アキは目を閉じた。