―何分泣いただろうか。千里のシャツがあたしの涙でびしょびしょ。おまけにあたしの顔も。


「ごめ、千里シャツ…」

「いーよ、こんぐらい。彼女の涙ぐらいヘーキ。」

「彼女じゃないってば…」


笑いながらそう答えれば彼もふわりと笑った。


お兄ちゃんによく似てるなぁ。


「…音色、血固まってる。」

「あ」

「洗おっか。」


優しくそう言うもんだからどうも調子が狂う。


千里はあたしに魔法をかけたみたいに何でも洗い流してくれる。


千里はあたしの“魔法使い”だ。