「ソラ」

ボケッとしていたから、いきなり声をかけられてビクッとする。

パッとヒカルをみれば、あたしを見ずに前を向いていた。


「ヒカル?」
「前」


ゆっくりヒカルから視線を外し、前を向く。


「わぁっ」


なんで気づかなかったんだろう。

目の前には、ゲレンデにある灯りがすべて輝いていた。

光で雪が輝いてる。キラキラしてイルミネーションみたい。


「理由はわかんねぇけど、夜中の2時に灯りがつくらしくてさ。お前こーゆーの好きだろ」
「うんっ」


キレイな雪景色がみれたことも、ヒカルが、あたしが好きだろうなと思ってこんな時間に、ここに連れてきてくれたこと。

それがすごく嬉しい。


ヒカルとの思い出を忘れることなんて絶対にない。

けど、今日のことはいつも以上に記憶に刻みこむ。


ヒカルがあたしのために、ここに連れてきてくれたこと。

雪景色の素晴らしさ。


あたしは一生忘れない。




すごく幸せな旅行は、こうして幕を閉じた。

この幸せはずっと続くと思っていたのに。