LOVE PRINCESS(壱&沙耶)




話し込んでいた俺達は今まで景色を見る余裕さえなかったけど。

いつの間にか頂上は過ぎていて、観覧車は下降し始めいるのにも関わらず。


「早く降りたいよ~」


隣では俺の服を掴み、ぐしゃぐしゃな顔で泣いている。


「じゃあ初めから乗らなきゃいーのに」

「なっ! だって、あの時は観覧車しか目に入らなかったんだもん!」


ぷぅっと拗ねたような顔を見せる沙耶ちゃんが、あまりにも可愛くて。


――ちゅっ

思わず、頬にキスをした。


わなわな。
そんな言葉がピッタリな沙耶ちゃんは、口をパクパクしたまま俺がキスした頬を押さえていた。


「頂上じゃなかったけどな」


悪戯な笑みを零す俺に、いつまで経っても声にならない沙耶ちゃんを見てるのは悪くない。