話し込んでいた俺達は今まで景色を見る余裕さえなかったけど。
いつの間にか頂上は過ぎていて、観覧車は下降し始めいるのにも関わらず。
「早く降りたいよ~」
隣では俺の服を掴み、ぐしゃぐしゃな顔で泣いている。
「じゃあ初めから乗らなきゃいーのに」
「なっ! だって、あの時は観覧車しか目に入らなかったんだもん!」
ぷぅっと拗ねたような顔を見せる沙耶ちゃんが、あまりにも可愛くて。
――ちゅっ
思わず、頬にキスをした。
わなわな。
そんな言葉がピッタリな沙耶ちゃんは、口をパクパクしたまま俺がキスした頬を押さえていた。
「頂上じゃなかったけどな」
悪戯な笑みを零す俺に、いつまで経っても声にならない沙耶ちゃんを見てるのは悪くない。

