LOVE PRINCESS(壱&沙耶)



「だって私、壱人君の弱味につけ込んだよ?」

「弱味?」

「……心菜さんが陽呂と上手くいって。
その時、わざとそばに居たんだもん。
だから……もし、そばに居たのが私じゃない他の誰かでも…」


その先に言いたい事がわかってしまって。


――ゴンッ

「ばーか」


俺の頭突きと、言葉は、ほぼ同時だった。


「い、った」

「当たり前。
沙耶ちゃんが、わけわかんねーこと言うから悪い」

「で、でもっ」

「誰でも良かったわけじゃない。
沙耶ちゃんだったら、だろ?」


好きな奴が、他の人を好きなのを見てるのって、どんなに辛いか知ってる。

それを俺みたいな悪あがきしないで、ずっとそばで見守っていてくれた沙耶ちゃんだから。


だから、恐い。

沙耶ちゃんが俺から離れていかないかなって。

沙耶ちゃんが他の奴を好きにならないかなって。


林に言われて気付いた時から恐くて恐くて、仕方なかったんだ。


今まで気付けば隣に居てくれているのが当たり前で。

俺を追いかけてくれてた沙耶ちゃんだったのに。


いざ向き合うと、どうすれば良いのかわからなくなった。

だから、何も言えなくなって。


かっこ悪い俺を見せたくなくて隠してたんだと思う。