胸元からは、すすり泣く声が聞こえてくる。
俺は沙耶ちゃんの頭の上に顎を乗せて、はぁーっと大きく息を吐いた。
まさか、この言葉を言うのがこんなにも苦しくなるなんて思ってもみなかったから。
いつか言わなきゃいけない、そうは思っていても。
本気って、苦しいんだな。
「い、壱人くぅーん……」
胸元から呼ばれた声に顔を向けると、鼻を真っ赤にした沙耶ちゃんが居た。
「いつから? もう心菜さんのことはいいの?」
ほら、やっぱりね。
心ちゃんの事を好きだった俺、に気を遣ってたんだよね。
「思ってた通り」
「へ!?」
そう呟いた俺に沙耶ちゃんは首を傾げた。
「沙耶ちゃん、俺が心ちゃんの事をまだ好きだと思ってたんだろ」
「……うん」
「んなわけねーじゃん」
「……えっ?」
「心ちゃんの事は好きってのとは、また何か違う気がする」
「な、何それ~」
何だろね(笑)
正直、俺自身もわかんない。
だけど、俺が今守りたいって思うのは沙耶ちゃんだけで。
一緒に居て欲しいって思うのも沙耶ちゃんだけ。

