「俺は、沙耶ちゃんの前で自分自身を作ろうとは思ってないよ?
ただ……気付かないところで作ってるのかもしれないけど」
「え?」
多分、それは。
誰から見ても“礼儀正しい、規律の守る、健全な生徒会長”そういうんじゃなく。
沙耶ちゃんから見られる“俺”を作ってたのかもしれない。
「でも、それは多分。
沙耶ちゃんが思っているような作った俺じゃないと思う」
「え、どういう意味?」
「沙耶ちゃんさ、他にも言いたい事あるんじゃない?」
そう再び沙耶ちゃんを見ると、俺から目を逸らした。
「……、壱人君って……、私のこと、好きかな?
あ、勿論そんな凄いいっぱいとかじゃなくて、そのー、少し?
えっと、ちょっとでもって意味でっ」
バッと顔をあげ、手を大きく振り回しながら、必死に話す。
それを何も言わず見つめる俺に『あ、違うの。そんな意味じゃなくてね?』真っ赤な顔は今にも泣きそうで。
そんな沙耶ちゃんを引き寄せた俺は、
「好きだよ?」
そう耳元で囁いた。

