「ど、どうした、の?」
震える声で尋ねる沙耶ちゃんに答える余裕なんてない。
また沙耶ちゃんに気を遣わせちゃった、って俺への苛立ちと。
沙耶ちゃんが俺が笑って良かった、って喜んだ事への恥ずかしさと情けなさ。
色んな思いが交差する中、沙耶ちゃんの喜んだ顔に思わずドキッとして赤くなってるなんて知られたくない。
「こっちに座ったら、傾いちゃうよっ」
そんな心配いらなかったかも。
沙耶ちゃんは観覧車が傾いていることに必死みたいだから。
「ね、壱人君どうしたの?
私、何かしたっけ?」
ほら、また俺の顔色を伺ってばっかり。
嫌な事をされたんだから、怒ればいーのに。
「さっき……何か話かけてただろ?」
観覧車の大きな窓に背中を預け、足を伸ばすようにして座り直した俺は、下を向いたまま話す。
沙耶ちゃんが、俺を見ているのはわかるけど表情までは見えない。
これは、俺なりに気を遣ってみた。
言いにくい事なら尚更。
俺が真っ直ぐに見ていたら話せないのかなって思って。
「あ、うん。……あのね、壱人君」
「ん?」
「私と居るのって無理してない?」
「は?」
思わず、沙耶ちゃんの方を振り返ってしまった。
沙耶ちゃんは、不安そうな顔で俺を見つめていた。

