そんな俺をキッと睨んだ沙耶ちゃんは『速いと景色なんて見えないでしょう』と頬を膨らませて怒る。
意味わかんねー。
意味がわからなさ過ぎて笑える。
いつまで経っても笑ってる俺に、沙耶ちゃんは怒っていたはずなのに。
「よかった」
そう呟くから。
「何が?」
そう聞き返した。
だって、笑われてるのに“よかった”なんておかしいだろ?
笑ってんのは俺だけどさ。
「壱人君。今日、ずっと難しい顔してたから。
本当は来たくなかったのかなって、ちょっと思ってたんだ」
「え?」
「ほ、ほら。
昨日、無理矢理決めちゃった感じだったでしょう?」
「そんなこと……」
「でもよかった。
観覧車乗って正解だったかも。
恐いけどね」
涙目で、頬をほんのり赤くして、そんな風に言われたら……。

