正直に言えば、怖くて近づきがたいイメージがあった。
だけどこの不良ボーイは、表情が何処と無く柔らかくて派手な見た目のわりに気取った様子もない。
「アイス代…」
「いーよ。久々に女の子から抱き着いてくれたし、満足」
彼はそう言って、あたしが小銭を渡す前に姿を消してしまった。
こんな人、初めてかも…
あたしはまだ冷えたアイスを片手で持ちながら、そう思った。
人混みはしばらくすると減っていき、それでもぶつからないように気を付けて美樹の元まで向かう。
って言うか、彼が言ってた『久々に女の子から抱き着いてくれたし』って…
やっぱり単純に人を判断するのは、いけないのかも。
抱き着いたわけじゃないし!
美樹の元に駆け寄ると同時に、休憩時間終了の悲しいチャイムが鳴った。
「チョコしかなかったけど、大丈夫だった?」
「全然大丈夫…ってあれ?何で渡したアイス代持ってるの?」

