「俺じゃねーよ。コイツに謝れ」
不良ボーイは不機嫌な表情であたしに向かって指を差す。
男子はあたしに目を合わせると、また頭を深く下げて『本当にすいませんでした』と礼儀良く謝った。
「…大丈夫ですよ!」
あたしはそう返すと、男子はスッと逃げるように人混みに紛れて消えてしまった。
「あの、ありがとうございました」
背後にいた不良ボーイにお礼を言うと、無言でアイスケースに手を伸ばす。
え?と思う暇もなく、彼はチョコ味のアイスを取り出した。
そしてあたしに、ひょいっとアイスを差し出す。
「…?」
「チョコしかなかったけど、これでいいか?」
あたしの為に取ってくれたの?
彼は『チビだからまた人混みに潰されるぞ』と言いながら財布を取り出して会計まで済ませてくれた。
不良ボーイなのに優しい…?
元々派手な女友達と繋がりがあるあたしだけど、派手な男の人とはあまり接点がない。
見るからにチャラチャラしてるし、軽そうだし…

