『ピエロ“哀”/by.沃』


彼はピエロ
頬を伝う滴が何たるかを知る事なく
彼もまたそれを善しとした

彼はピエロ
胸を締め付けるこの苦しみを善しとせず
彼は哀しみから目を背けた

だけど彼は知らない
胸を締め付ける程に
大事にしていた物があった事を
涙が頬を伝う程に
愛した物があった事を

胸・震わせ・心・乱れ
窮まって流した愛(かな)しい涙
彼は今だ
哀しみを知らない