「---。わかった。」
不安はあるものの、
パンダの言う『言霊の力』も気になるし、
町を歩けばいろんな声や姿を見る。
ソレを少しでも
減らせれば、
シンの生活も安らかなものになるかもしれない。
「わかった。
では、シン…顔をこっちに…」
「え?待てよ。キスするのか?」
「は?なんでだよ。
俺のこの姿じゃ唇を切って血をもらうのが一番楽なんだ。
皮膚とか、噛み切れない。」
…たしかに。
テルテルぼーずのマスコットで
やけにぬいぐるみ感が出ているその姿では無理だろうな。
とシンは納得しながら、
「じゃー、俺が切るよ。」
はぁ。
と、ため息をつきながら
シンは台所へ向かう。
取り出した包丁を少し見つめ、
パンダの前へと立ちすくむ。
「ちょっと、怖いな。」
シンは少し苦笑してから、
左手の腕を包丁で
ビィッ
と切った。
うっすらと長い線ができたかと思うとその線は赤くなり
ぷくっと浮き出して、
血液が流れる。
「シンっ。おま…」
「なんだ、パンダ。
血を求めたのはおまえだろ?」
シンは滴り落ちる血の腕を突きだした。

