面白そうに、そいつは綺麗な笑顔を作った。

「とりあえず、俺は悪魔。


 不便だし、
 シンが名前をつけて?」


「名前って…?」

こいつの意図がわからない。
シンは顔をしかめる。

こういうお願いをしてくるヤツは初めてだ。




「あのなー。名前って大事なんだぜ?

 いろいろ契約のときに必要だし、
 俺が存在している証だろ?

 名前がないと、

 まず、俺が俺じゃなくなるし、
 誰も俺だと認識しなくなる。」


よくわからないが、
『悪魔』の価値観と、人間の価値観を比べるほうがバカだろう。

「そんなに大事なら、
 なぜ名前が無いんだ?」


「あはは。『名前を取られた』んだ。
 ダサいだろ?」

おかしそうにそいつは笑ったが
何がおかしいのか
さっぱりシンには理解できなかった。