成宮がビニール袋から、たこ焼きを出してくれて渡してくれた。
「はい、神崎さんの分」
「ありがとう」
「冷めないうちに食べよ?」
「あ、うん」
プラスチック製の容器にかかっていた輪ゴムを外して蓋を開けた。
湯気が出てソースの香りが鼻に届く。
「あ、成宮?」
「ん?」
「いくらだった?」
当然、勝手に成宮の奢りだと思っていたけど、ハンドタオルを敷いてくれたり優しい成宮を見てると払わないと悪いと思った。
私って単純な女。
「いいよ。俺の奢りだから」
成宮はそう言ってクスリと笑うと、たこ焼きを頬張った。
「でも……」
「いいから。神崎さんも早く食べなよ?熱々で美味しいよ?」
「…………うん」
私はたこ焼きをひとつ頬張った。
「ホント、美味しい」
「うん」
ありがとう。
口に出して言うのは照れ臭い。
だから私は心の中で成宮にお礼を言った。



