「お腹、空かない?」
「アンタさぁ、私を見て何も思わないわけ?」
「えっ?」
「えっ?じゃなくて!」
せっかく浴衣着てきたのに。
私の浴衣姿を褒める前に飯のことを言うなんて。
「もういいわ」
私は成宮をほっといて先に歩き始めた。
「神崎さん!待って?あ、あのゴメン……」
追いかけてきた成宮を無視して歩き続ける。
「浴衣、可愛いね。よく似合ってる」
「今更、遅い!」
「ゴメン!」
早歩きで歩く私の横を必死について歩く成宮。
会場に近付くと更に人は増えていき、夜店が見えてきた。
「たこ焼き、食べたい」
朝昼とロクなものを食べてなかった私の空腹はソースの匂いでマックスを迎えていた。
「あ、うん。たこ焼き買って食べよ?ここのたこ焼き屋さんでいい?」
私は無言で頷く。
成宮が、たこ焼きを注文して買う。
もちろん、成宮のおごり。
「出来立てを入れてくれたよ」
「あっそ」
「どこで食べようか?」
「どこでも」
「じゃあ、あそこにしよ?」
今度は成宮が前を歩いて、私が後ろをついて歩く。
河原へ降りる階段にも人が座っていて、そこで成宮が止まった。



