超マジメ彼氏と超ワガママ彼女の恋愛事情




しばらくして村上さんが戻って来た。


オシャレなグラスに注がれたアイスティーをテーブルの上に乗せる。



「どうぞ?」


「あ、はい。いただきます」



グラスにストローを挿してアイスティーを一口飲んだ。


緊張しちゃって、アイスティーの味なんかわからない。


多分、私が普段飲んでる安いティーバッグの紅茶とは違うんだろうなぁ。



「優月ちゃん?親に連絡しなくてもいいの?」


「あぁ、うち、放任主義なんで。娘より仕事が大事みたいな両親なんで大丈夫です」


「そうなんだ」


「はい」



今まで何時に帰ろうと朝帰りしようと何も言われたことなんてなくて。


家にいると「いたんだ?珍しい」みたいな感じだし。



「あ、あの……」


「ん?」


「聞いてもいいですか?」


「うん」


「村上さんって、名前、なんて言うんですか?」



村上さんの下の名前を知らない私は、思い切って聞いてみた。



「あー……そう言えば、名前、言ってなかったね」


「はい」



合コンの自己紹介では名字しか言わなかったし。


村上さんはカバンから名刺入れを出して、その中から1枚名刺を抜き取ると私に渡してきた。