「理世?ネクタイ……」
「あー……これ?」
理世はネクタイに目線を落とした。
私が大和にプレゼントするはずだったネクタイ。
それを理世にあげたやつだった。
捨ててなかったんだ……。
「優月ちゃんがくれたやつ。大学の入学式にして行こうって決めてたんだ」
「でも、それは……」
「ゴメン……。思い出しちゃうかな?違うやつにしようか?」
理世はネクタイを外そうとした。
「ううん。凄く似合ってるよ」
「ありがとう!」
「眼鏡、しないの?」
「コンタクトにしたんだ」
「そうなんだ」
「でも、まだ慣れてないから家にいる時には眼鏡だけどね」
理世はそう言って笑うと、腕時計に目をやった。
「やべっ。もう行かなきゃ」
理世はそう言って、黒のリュックを背負う。
スーツにリュックって、高校生みたい。
まぁ、ほんの1ヶ月前までは高校生だったんだけどね。