私が立っていたのは成宮の家の前。
家にいるかどうかわからない。
もしかしたら病院に行ってるかもしれない。
少し震える手で呼び鈴を押した。
しばらくして玄関が開く音がした。
「……神崎さん……どうして……」
開けられた玄関に立っていたのは成宮だった。
目を大きく見開いて私を見てる。
「真世ちゃんが……真世ちゃんが、その……」
なんて言っていいのいかわからなかった。
足に力を抜くと今にも倒れそうになる。
「会いに来てくれたんだ。真世も喜ぶよ」
「えっ?」
成宮を見ると、少しだけ笑顔だった。
「今日の朝、帰って来たんだ。会ってやってくれないかな?」
「いい、の?」
「どうぞ?」
成宮はそう言って玄関を大きく開けてくれた。
私は玄関の中に入る。
お線香の香りが鼻を掠める。
玄関には少ないけど、いろんな大きさの黒い靴が並んでいた。



